慰謝料は請求しない方がいい?後悔しないための判断基準と注意点

配偶者の不倫、モラハラ、暴言、婚約破棄……
大きな傷を負ったとき、真っ先に浮かぶのが「慰謝料を請求したい」という思いかもしれません。

ですが最近、「慰謝料は請求しない方がいいのでは?」という選択をする人も増えてきています。

この記事では、

  • なぜ慰謝料を請求しないという選択があり得るのか
  • 慰謝料を請求しない方がいい具体的なケース
  • 法的・金銭的・心理的なメリットとデメリット
  • 請求しない代わりに取れる行動とは

といった点を、わかりやすく解説します。


慰謝料とは?基本をおさらい

慰謝料とは、相手の違法・不当な行為によって精神的苦痛を受けたときに、その損害の埋め合わせとして支払われる金銭です。たとえば、

  • 配偶者の不貞行為(浮気・不倫)
  • 婚約破棄
  • モラハラ・DV
  • 名誉毀損・侮辱
  • 離婚に伴う精神的苦痛

などが対象になります。

本来、被害者が「受けた傷」に見合う補償を求めるための制度ですが、実際には「慰謝料請求する=心の整理になる」とは限らないのです。


「慰謝料は請求しない方がいい」と言われる理由とは?

1. 回収できない可能性が高い

慰謝料を請求しても、相手に支払能力がなければ意味がありません。

  • 相手が無職、または低収入
  • 自己破産の可能性がある
  • 財産の隠匿や逃亡リスク

このようなケースでは、裁判に勝っても実際には1円も回収できないことも珍しくありません。

2. 時間と費用がかかる

慰謝料請求には、以下のような手間とコストが発生します。

  • 弁護士費用(着手金+成功報酬で数十万円〜)
  • 証拠収集の手間(LINE、写真、通話履歴など)
  • 調停や裁判にかかる時間(半年〜1年以上)

「お金をもらうために、さらに精神的ダメージを受ける」ような構造になってしまうこともあります。

3. 感情のもつれが長引く

慰謝料請求は「勝ち負け」の構造を生み、相手との対立が深まりやすくなります。

特に、以下のような状況では要注意です:

  • 子どもがいる場合(共同養育の支障)
  • 離婚や別居交渉中で話し合いが必要なとき
  • 相手に報復的な感情を持たれているとき

「請求しなければ円満に話が進んだのに…」と後悔する人も多く見られます。


実際のケース:慰謝料を請求しないと決めた理由

ケース1:婚約破棄された女性(30代・会社員)

相手の浮気で婚約破棄に。怒りと悲しみでいっぱいでしたが、裁判や交渉のストレスが辛すぎて途中で断念しました。
今は「関わらない」という選択をしたことで、気持ちの整理が早まりました。

ケース2:不倫されたが子ども優先で和解(40代・主婦)

夫の不倫で離婚を決意。慰謝料を求めて裁判も検討しましたが、子どもの学校や生活への影響を考えて請求はせず、代わりに養育費と親権に集中しました。

このように、「お金よりも心の安定」や「子どもの生活」を優先する選択肢もあるのです。


慰謝料を請求しない方がいいかもしれない5つのケース

  1. 相手に財産や収入がない場合
     → もらえないのに労力だけかかる
  2. 感情的な争いを避けたい場合
     → 和解・協議の障害になることも
  3. 子どもがいる・共同生活が続く可能性がある場合
     → 対立より信頼関係の維持を優先したい
  4. 自分の心の整理を最優先したい場合
     → 執着を手放して前を向きたい
  5. 時間・お金・労力を別のことに使いたい場合
     → 裁判に費やすより、引越しや再出発に投資

慰謝料を請求しない代わりにできること

1. 離婚条件で有利な交渉をする

慰謝料を放棄する代わりに、

  • 財産分与の割合を増やす
  • 養育費や婚姻費用を優遇してもらう
  • 住宅ローンの負担を免除してもらう

など、現実的で持続可能な条件を引き出すことが可能です。

2. 示談書・公正証書で記録を残す

慰謝料は請求しなくても、相手の非を認める証拠や経緯を公正証書や示談書として残すことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

3. 心のケア・支援機関の活用

法的な報復よりも、カウンセリングや支援団体の活用で自分の感情と向き合う方が、回復が早いケースも多いです。


請求しない選択をする際の注意点

  • 示談交渉の場では慰謝料放棄の代わりに何を得るかを明確に
  • 慰謝料請求権には時効(3年)もあるため、放棄する際は熟慮を
  • 感情だけで判断せず、弁護士に一度相談するのが理想

慰謝料を請求しないことは、逃げではなく「自分の人生を取り戻す」ための選択にもなり得ます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 慰謝料を請求せずに離婚したら、後で後悔しませんか?

後悔する人もいますが、「相手と関わらない」ことで早く前を向けたという声も多いです。自分にとっての優先順位を明確にしましょう。

Q2. 相手に請求しても無視された場合はどうなりますか?

内容証明や調停、訴訟などの手段がありますが、時間と費用がかかるため、見合うかどうかは慎重に判断を。

Q3. 弁護士に相談するだけでも料金はかかりますか?

多くの弁護士事務所は初回相談無料です。一人で抱え込まずに専門家の意見を聞いてみましょう。


まとめ:慰謝料を「請求しない」ことは前向きな選択

  • 慰謝料請求には、金銭だけでなく時間・労力・精神的なコストが伴う
  • 相手との関係性や自分の再スタートを優先する選択もある
  • 「請求しない代わりに得る」条件をしっかり確保することが重要
  • 後悔しないためには、感情だけでなく全体の損得で考えるべき

「慰謝料を請求しないなんて負けだ」と思う必要はありません。
「自分の人生を前に進めるために、今なにを選ぶか」が何よりも大切です。